日本各地で川が氾濫し大災害をもたらした台風19号。
そんな中にあって、関東地方を貫く利根川は、氾濫することなく利根川周辺の方々の生活は守られました。
その陰に建設までに長い歴史を持ち, 2019年10月1日に※試験湛水(たんすい)が開始されたばかり の八ッ場ダムの存在があります。
※貯水してダムに問題ないかチェックするための試験
(2020年春完成予定)
そして、八ッ場ダム建設により底に沈んだ温泉宿、川原湯温泉があります。
今回は、川原湯温泉をとりまく歴史と今についてお伝えします。
八ッ場ダムに沈む温泉宿、川原湯温泉とは?
八ッ場ダム建設に沈んだ川原湯温泉。
川原湯温泉の歴史は古く、鎌倉幕府の初代征夷大将軍、源頼朝によって発見されたといわれています。
長い間人々を楽しませ、古くから温泉ファンに愛される名湯でした。
川原湯温泉を語る上で、八ッ場ダム建設の歴史は切り離せません。
八ッ場ダム建設の最初のきっかけは、昭和22年9月の洪水被害をもたらしたカスリーン台風のようです。
そこから完成まで、長い年月を要しました。
『首都圏の人たちのために故郷が水没する』ことに川原湯温泉を支えた地元住民の方々のダム建設反対運動も起こりました。
賛成派、反対派で町が二分するなど地元住民の方にとってはつらい思いもされたようです。
昭和55年に群馬県から生活再建案が、平成2年には建設省と群馬県が地域居住計画を提示することで地域住民の方々との話し合いが進められました。
ダム建設構想から40年以上がたった、平成4年に長野原町、平成7年に吾妻町(現東吾妻町)で『八ッ場ダム建設に係る基本協定書』が締結され、ダム建設工事が開始されました。
(その後平成21年9月17日民主党政権で一方的な建設中止となりましたが、平成23年12月22日に建設継続の決定がされております)
これには、地域住民の方々の苦渋の決断があったことを忘れてはなりません。
八ッ場ダムに沈む温泉宿、川原湯温泉の今は?
川原湯温泉街は高台の代替地へ移転され、新温泉街として復活しております。
川原湯温泉街のコンセプトは
『景色を見ながらブラブラ歩く温泉街』
公営の駐車場が2カ所あり、そこから街全体を散策できるようになっています。
ちょうどこれからの時期の紅葉を見ながら散策するのもいいかもしれません。
今後は、紅葉だけでなく、ダム湖も観光名所の一つになることでしょう。
本来、 試験湛水により少ずつ水が貯水されダム湖になる予定でしたが、今回の台風19号の影響により既にダム湖となっております。
川原湯温泉の象徴というべき『王湯』
『王湯』は宿泊施設ではなく、共同浴場です。
平成26年7月に水没地区から移転してきました。
【料金】大人500円 子供300円(2時間)
【営業時間】10:00から17:30
【休日】1月1日・1月20日
〇泉質・・・含硫黄・カルシウム・ナトリウム・塩化物
〇効能・・・神経痛・リウマチ・胃腸病・婦人病など
現在は、新たに掘られた源泉を利用しています。
中をのぞくと、1階が浴場、2階が休憩室となっております。
男湯、女湯それぞれに内湯と露天風呂があり、露天風呂からダム湖が望めます。
ほぼ、年中無休でやられているようです。
1月20日にお休みなのは
『湯かけまつり』
というイベントが開催されるからです。
湯かけまつり
ふんどし姿の若衆が早朝(5時)から湯のかけ合いをして湯の神に感謝するユニークな行事
源頼朝が温泉を発見してから約400年が過ぎるある日の事、突然温泉が出なくなってしまいました。村人達が困り果ててましたが、そのうちひとりが温泉の匂いをかいだところ、ニワトリの卵をゆでた匂いがします。そこでニワトリを生贄(いけにえ)にしてお祈りしたところ、お湯が再び出てきたので、みんなでお祝いする事となりました。はじめは「お湯わいた、お湯わいた」と言って喜んでいましたが、そのうち「お祝いだ、お祝いだ」と言ってみんなでお湯をかけあうようになりました。これが厳冬の朝、賑やかに行われる奇祭「湯かけ祭り」のはじまりという事です。
1月だけでなく、4月には春祭り、8月には夏祭りが開催されます。
平成26年7月に新天地へ移転してきた『王湯』
まだ、新しさを感じさせる佇まいですね。
源頼朝が発見して800年。
入り口には源氏の代表的な家紋、 笹竜胆 ( ささりんどう )が掲げられています。
まとめ
八ッ場ダム建設に伴い、多くの犠牲をはらってきた温泉宿、川原湯温泉。
現在は新天地で復活をしております。
そして、台風19号の被害を受け止めた八ッ場ダム。
八ッ場ダムへの感謝がネット上で話題になっていますが
八ッ場ダムの底に沈んだ地域住民の方々苦悩があったからこそ、今回の台風の被害を免れた地域があることを忘れてはいけません。
今後、この地に多くの方が訪れることになると思います。
その際には、八ッ場ダムとともに川原湯温泉にも足をお運びいただきたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。